7月30日 【小児医療の現状】

   ふじえだファミリークリニック 藤枝俊之先生

去る7月30日、久しぶりのミニ研修をおこないましたが、今回はふじえだファミリークリニック院長の藤枝俊之先生に講師をお願いし「小児医療の現状」と題して昨今の診療に際し感じることをお話しいただきました。
1 SNSといじめについて

 昨今LineやFacebook、Twitter等の新しい形態のソーシャルネットワークが登場し話題になっています。私などはなかなかそうした流れに乗れず日々を送っていますが、若年齢層ではそうした流行に敏感で、急速に普及が進んでいるのが現状です。しかし、そうした中、新しいかたちの

いじめが登場しているようで、いろいろと問題になっているようです。例をあげると、

①グループメンバーにいれない

②いじめの動画をアップロードし広く頒布する。

③SNSへの書き込みがリアルないじめのきっかけになる 等です。

SNSをはじめ、インターネットの世界は匿名性が高く、監視が難しいため、元来いじめが横行しやすい環境であるといえます。相手との直接的な対面がないため相手の気持ちが通常いじめ以上にわかりにくく簡単に操作できてしまうため低い罪悪感で面白半分にそれに加担できてしまいます。悪質なケースでは、標的を誹謗中傷するだけでなく、標的を特定して個人情報をネット上のあちらこちらにばらまき、さらにはネットの世界を飛び出してリアルに直接嫌がらせが広がる場合まであります。学校や職場における通常のいじめならば登校拒否をしたり転職したりすることによって直接的な被害からのがれることができますがネットいじめの場合はインターネットというネットワークを通して広範囲にいじめがひろがる可能性があり、また、管理者にログの削除を依頼しないかぎり、半永久的にその痕跡がネット上に残ってしまうため長期にわたってそれに苦しめられる可能性もあります。子どもがそういうケースに巻き込まれないかを把握するには親の方でもそういうネットワークに対する知識をもち監視する必要があるといえ、「自分はこういうのは・・・・・」と思考停止せず、理解に努める必要があると言えます。

 

 

四国中央市での救急対応について

 救急対応はレベルに応じて3段階に分類されます。

風邪による高熱や家庭では処置できない切り傷といった症状を診察治療するのが1次救急で、初期救急とも言います。入院治療の必要がなく、外来で対処しうる帰宅可能な軽傷患者に対応する救急医療です。2次救急は、入院や手術を必要とする患者が対象で,3次救急は生命に危険が及ぶような重症・重篤患者への対応を担います。

 1次は開業医や休日夜間救急(急病)センター、2次は24時間体制で手術ができる設備を備えた病院による輪番制をとっているのが基本で、3次は救命救急センターレベルの施設がそれにあたります。

 四国中央市でも同様で、現在は市内の小児科医と四国中央病院の小児科医が協力して午後10時30分までの1次救急に対応し、それ以降は新居浜の急患センターにて対応を行っています。

 ただ、ここで問題になっているのが夜間などの時間外の対応要求が難しくなっていることです。その原因は大きく分けて2点です。

 その1 これは小児科領域だけでなく全領域でいえることらしいですが、全国的には医師免許を持つ人の数は決して減少していないものの、大学に進み医師になった人がそのまま都会部に集中し地方に戻ってこないケースが多く、また家庭を持ち出産した女医の社会復帰が難しいため、地方で実働している医師の数が増加せず、またそれらの医師の高齢化の進行もてつだって、夜間の対応体制が確立しにくいこと。

 その2 こちらが大きな問題といえますが、時間外の対応要求の実数が非常に増加していることです。救急対応を希望して来院する患者のうち、かなりの数が実際は翌日、病院の通常の診断時間まで経過可能なごく軽症の状態だそうですが、家庭でのその判断ができず、来院してしまうケースが多いことです。(四国中央市では、80%がそれにあたるそうです)

 子をもつ親の気持ちとして、子どもに異常が生じた際に翌日まで待てない気持ちは理解できますが、それが高じて担当する医師を罵倒してでも診察を受けようとしたり、仕事などで明日都合が悪い、夜のほうが空いているなどの理由で救急を利用したりして、度を越えた対応を希望する方が増加傾向にあるとのことです。それにより重症患者への対応が遅れるようなことにならないよう、救急医療についての理解と協力を求めるために、現在市内の小児科医や四国中央病院の医師による勉強会を設けて対応を協議、資料やDVDの製作を検討中とのことです。

風疹への対応について

 現在全国的に風疹患者が増加する傾向があり、2010年の1年間での報告数が87件だったのに比べ、2013年では7月上旬ですでに12000件オーバーの大流行の状態となっているそうです。特に問題となっているのは妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群(CRS)で、妊娠10週までに風疹ウイルスに発感染するとの90%の胎児で、11~16週までの感染では10~20%の胎児で心奇形・難聴・白内障の重篤な障害が発生しています。(妊娠20週以降の感染で発生することはまれ)

 女性では、1977年より中学生を対象とした風疹の予防接種が始まりました。2006年からは満1歳、就学前の2回のワクチン接種開始。さらに同時進行で経過措置として、高校生くらいまでの年代を対象としたワクチン接種も行われています。しかし、年齢層が高くなるほど接種率が減る傾向にあり、そうした人たちがキャリアとなって感染が継続してしまっている状態のことです。
 この状態を改善するためには予防接種を受けたことがないと思われる満34歳以上の成人男性がワクチンの予防接種を受けることが重要です。現在はワクチン不足傾向にあるため男性がワクチン接種を受けるのは難しいですが、感染者が減少しワクチン数に余裕が出てくる秋~冬ころを狙って男性もワクチン接種を受け感染予防に努めることが望ましいです。

 ちなみに、アメリカでは感染者が出たら即座にCDC(アメリカ疾病管理予防センター)が管理に乗り出してくるレベルの案件として取り扱われ、現在のような対応の日本や日本人は風疹の感染源として説明されているそうです。また、アメリカにへの永住を希望する人には風疹をはじめとする指定の予防接種が条件となっているそうで、日本の現状との間には大きな温度差があることがわかります。

 

 こうして聞いてみると我々も各々の立場で上記3点の状況改善のために関与できる余地はありそうですね。

 

いろいろな場面で、これらの点について情報発信することができればいいと思います。